《覗き》インスタレーション

三田祭で教室にテントを張った。

03は見ることが課題。事前のリサーチとして、研究会を連続開催し、サルトル、フーコーにおける「覗き」、寺山修司における「覗きと演劇」、さらには、近代科学、観察、二分法などをテーマにして、村上陽一郎『近代科学を超えて』、吉澤夏子『世界の儚さの社会学』を読んだ。

 

会場配布資料 Edit

「覗き」のアンソロジー

他者を対象化することは、私の存在のひとつの防御であり、この防御は、私にとっての存在を、他者に附与することによって、他者にとっての私の存在から、私を解放する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・sartre,j-p.

私たちは皆、他人の客観的真実については明敏です。しかし、他人を見ているときの自分の視点については明敏ではありません。ですから、大切なのは、客観化する者の視点を客観化することです・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・bourdieu,p.

他者を通して自分の痛みを語るということは、自分の苦しみを隠蔽するということだし、マイノリティであるその他者に対して自分の立場を消してしまうことにもなります・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・shimabuku,m.

アイデンティティを、文化的な実践が表象するような、前もって存在する事実として考えるのではなく、つねに過程の中にあって、その表象こそが構築している「産物」と考えたほうがいい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・hall,s.

観察とは区別の操作である・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・luhmann,n.

この展覧会で、モダニズム美術に似ているとして選び出された『部族美術』というカテゴリー自体が、両者は類似すべしといった課題を全うするために意図的に構成されたものに他ならない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・clifford,j.

フィールドワークの場所が「前人未到の未開の地」や、言語・生活習慣などの異なる異文化ではなく、仮に自分の生活圏内であったとしても、そこで参与観察の対象となるのは、自分とは「異なった」、一定のカテゴリーに属する人々ということになるのだ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・nakatani.a.

神と自然、人間と自然、「見るもの」と「見られるもの」の対峙・・・・・murakami.y.

相手に見られることなく、相手を見る、視線という……ささやかな技法。……可視性の領域を押しつけられ、その事態を承知する者は、みずから権力による強制に責任をもち、自発的にその強制を自分自身へ働かせる。……二役を演じる権力的関係を自分に組み込んで、自分がみずからの服従強制の本源になる・・・・・・・・foucault,m.

Project Format Edit

名称 ソシオインスタレーション《覗き》

日時 2002 11 21/22/23/24 09:30-17:30

場所 慶応義塾大学三田キャンパス 432番教室

発想 ソシオインスタレーション《覗き》の構成

 序章−《レセプション》

 「観る観られる」「覗く覗かれる」の同時性・反転性・・・(*記帳する来場者に向けられたカメラ、と同時に、その映像にある自分の姿を受付に置かれたモニターで来場者は見ることになる。*来場者に渡されるアンソロジーは、広義の観察や調査や展示を含め「観る観られる」の反転性や権力性を指摘する文書。)

 アートの「アート性」・・・(アート作品の制度的成立を戯画的に反省するため、作品が「作品」であることを通常(美術館などで)指示するプレート<表題、素材、作者、制作年月日、所蔵者など>を受付に設置する)

 社会学の「社会学性」・・・(社会学の制度的成立を戯画的に反省するため、時代遅れの「文献案内」を来場者に配布・貸与する)

 公開/明/見せる−《タープ》

 アートユニバーシアードの「報告」・・・(「菜の花」の資料、写真、Tシャツなどを、明るいテントの中で、公開し展示する)

 香月制作ビデオの上映・・・(岡原ゼミの活動を見せつつ、他のゼミを覗く「岡原ゼミ」という、入れ子状の構造をビデオ作品がもつ)

 匿名者への公開を前提にした「私見」・・・(雑記帳・日誌を置いて、岡原ゼミの活動への感想を来場者に書いてもらう・見てもらう)

 非公開/暗/見られる−《テント》

 トランク・・・(暗いテントの中に鞄を置き、その中に、非公開を原則とする文書(期末試験など)や資料(プライヴァシーに関わる信書、写真など)を入れ、来場者がペンライトで覗けるようにする)

 引用・・・(現代アートで「覗き」「プライヴァシー」をテーマに制作しているソフィー・カルの痕跡を残す、具体的には彼女に関するブックレットをトランクに入れる)

 暗闇の身体・・・(暗いテントの中、シュラフの上でトランクを覗く来場者の身体は、それ自体が覗かれる客体になる。シュラフ・寝袋のもつメタファーや、非公開かもしれない資料を覗いているときの心理状態、これらが来場者の身体を覗きという欲望の向かうところにする)

成員

・Production コレクティブ

・Staff 黒田、名波、山口、渡辺、菅本、星野、兜木、中澤、藤澤、漆山、江口、保田、久野

・Video  香月

枠組 慶応義塾大学第44回三田祭

協働 社会学ゼミナール委員会